「まるで建築家のような作業だったわ、あれこれハーモニーを考えていく作業は。特にシングル曲<ハートブレイカ→>は、アルバムの中で一番苦労した曲だった。繰り返しの多い曲だから、自分のボーカルにいろんなダイナミックスさを加えなくちゃいけなかったの。ここがヤマのところ、ここが2番、ここがコーラス、アドリブもやって、と、自分でセクションごとに違った音と声を重ねることを考えながら、ほぼ全部のパートを歌った。実はバック・グラウンドは私の大好きなパートで、リードを歌うよりも好きなのよ(笑)」
「RAINBOW」というアルバム・タイトルには、7色のようにさまざまな声を出せるマライアのボーカルと、彼女の体内にアイリッシュ、スパニッシュ、アフリカン・アメリカンといった、いろいろな血が流れていることが象徴されている。確かに、シングル曲を筆頭にくブリス><エックス・ガールフレンドン.....、どの曲を聴いてもマライアの声の魔術に驚かされるばかりだし、アッシャーやジョー、スヌープ・ドッグなど多彩なゲストとのコラボレーションも飽きさせることがない。
「声にしろ血にしろ、そういった違ったものが一つに合わさってこそ、素晴らしいハーモニーやパワーが生まれると思う。これは差別や人種を超えた愛を願ったアルバムなのよ」
ニューヨークで取材したマライアは、いつものように熱いメッセージを語る。
プロデューサーや作曲陣にはデヴィッド・フォスター、ダイアン・ウォーレン、ジャム&ルイス、ジャーメイン・デュプリ、DJクルーなど、こちらも豪華。マライアの可能性を限りなく広げようと大御所・新人構わず、興味のあるアーティストと積的に共演している。なかにはローリン・ヒルの影響を感じさせるナンバーもあるが、トレンドセッターと呼ばれるマライアらしく、今風のテイストを各所にちりばめながら、自分の声をふんだんに活かしたアレンジで大目にかせる曲が目立つ。 ヒップホップの多用が特に顕著だ。
「今一番興味があるのはヒップホップ。9歳の頃からずっと職いているけど、その可能性は無限よ。だから時々私はヒップホップ・アーティストである友人を羨ましく思うの。共演したダ・ブラットは、言いたいことを遠慮せずにリズムに合わせて何でも教える。それからパフ・ダディがクラシックのR&Bやロックをサンプリングで使うように、ヒップホップ自体がアートの形になれるのも素晴らしい。どんなタイプの音楽に合わせて歌ったりも、話したりもできる。私ガヒップホップを愛し、挑戦する理由はそこにあるの」
そもそもこのアルバムは、彼女が出演し、サントラも担当する映画「オール・ザット・グリッターズ」のために曲を書き出したものの、脚本が遅れたので、それだったら早くリリースしてしまいたい、と完成したもの。泉のように曲のアイデアが次々と浮き出てくるマライアにとって、ハートブレイカ一)をはじめとするお気に入りのナンバーを先送りにしておくのはもったいないことだったようだ。そして、曲作りを進めていくにつれて、名曲くヒーロー)に次ぐ話題曲になりそうなくキヤント・テイク・ザット・ウェイ(マライアのテーマ)>など、メッセージの強い曲も収録されるようになった。
「最初は私をいろんな意味でガッカリさせてしまうような人たちのこと、たとえばパパラッチのような人のことを書いていたけど、自分の子供時代を思い出し、やがて学校で仲間はずれにされているような子供達のためにも書きたくなった。自分には価値がないと思っている子供達や私の中に存在するイシナー・チャイルドに向けて、あなた達の中には輝くものがあるから、自分を信じて生きていくのよ”ってね。実際そういう経験を超えてきた人間の方が、後で成功しているでしょう?」
前向きな心を、愛を意しむ気持ちを数に託すマライア。「RAINBOW」は90年代を代表する歌姫によって、2000年、そして未来へと橋渡しするために愛を込めてリリースされた作品だ。