めったにライブをやらないマライアが、MTVの30分番組「アンプラグド」のために、フル・コンサートを行なった。そのもようはアルバム化、のちにビデオ化され、すでに世界各地で話題の的である。
デビューして2年、弱冠22歳にしてスーハースターとなったマライア・キャリーに、これ以上ビッグになったらもう応してなんかくれないかもじれないインタビューを、ニューヨークで行なった。生で見る彼女は、少女らしさが残っていてとてもかわいい。ややかすれた声で、テキハキとこちらの質問に答えてくれた。「これまでツアーをやらなかった理由のひとつは、時間がなかったこと。アルバムを2枚たて続けにリリースしたから、ツアーの準備に向けてエネルギーを貯める時間がなかったわけね。だから、次のアルバムを出した晩には、小規模なツアーをやろうと思ってる」
やはり、ツアーで毎晩あの高いピッチで歌うのはかなりたいへんでしょう、と言うと、うなずくマライア。「私の観客は、凝ったステージや踊りや花火なんてものより、レコードどおりの音楽を要求してくると思うの。ツアーで毎晩、都市から都市へ移動しながら歌うと、ノドへの負担もかなりのものになる。おまけに私の歌はどれも、敷しい歌い方を要求するしね。一曲歌うごとにつらくなるのよ」
そのため今後も、大規模なツアーはたぶん無理だという。このライブは、彼女が慎重にその驚異的高音を発声するさまを、つぶさに映し出している。
さて、MTV「アンプラグド」は、〝プラグしない〟、つまりコンセントを必要とする電気音楽を使わずに演奏することを原則とした、ライブ番組。よって今回のステージは、ストリングス、ホーン・セクションを導入して構成された。「私の声は、疑った音づくりやアレンジよりも、シンプルなほうがひきたつと思う。バンドの動きが少なければ少ないほど、声は観客に伝わりやすくなるから」
バック・パンドは、総勢27名。プロデューサーのウォルター・アファナシエフ、最新作エモーションズで作曲に参加したC&Cミュージック・ファクトリーのデイビッド・コールら、豪華なメンバーが顔をそろえた。「デイビッド・コールは、ちょうど日本でC&Cのコンサートを終えた直後で疲れ果ててたんだけど、むりやり〝お願い、お願い〟って懇願して出てもらったの。私は彼のピアノが大好き。彼は教会でピアノを弾きはじめた人で、ゴスぺルを原点とした彼とは、ぜひもうー度いっしょに仕事したいと思ってた」
また、このライブのハイライトはなんといっても、未発表のカバー曲「アイル・ヒー・ゼア」。マイケル・ジャクソンが声変わりする前に歌った、ジャクソン・ファイブの名バラードだ。「よく私の声は、マイケル・ジャクソンの子供時代の声に似てる、って言われるの。子供のころは、10ほども年の離れた兄や姉たちが、しょっちゅうモータウン系のレコードをかけていたんだけど、これはいつも好きだった曲」
同曲で男性ハートをとる黒人シンガーは、トレイ・ロレンズ。マライアのバック・シンガーのひとりで、まもなく完成する彼のソロ・デビュー・アルバムは、マライアがプロデュースしている。「彼は才能があるけど、コメディアンにもなれるほとおもしろい人」なんだそうだ。
そして彼女は早くも、次のアルバムに着手している。その後は、待望のツアーが小規模ながら、実現することだろう。